日本にも取引所はたくさんありますが、圧倒的な不満があります。それは、取引可能な仮想通貨の種類が少ないことです。
世界では、少なく見積もっても1万を超える仮想通貨が存在します。その全てで取引できなくてもOKですが、世界の売買代金上位25位くらいまでは自由に売買したいです。
海外取引所で取引可能な仮想通貨
下は、2021年6月3日時点の時価総額ベスト25です(CoinMarketCapからデータ取得し、1位から順に掲載)。右側にある〇×は、日本の取引所等で売買可能かどうかを示しており、取引できない仮想通貨のセルに色を付けました。
ちなみに、ここに掲載した仮想通貨は、当然ながら海外取引所で取引可能です。
仮想通貨名 | 略称 | 国内 |
ビットコイン | BTC | 〇 |
イーサリアム | ETH | 〇 |
バイナンスコイン | BNB | × |
テザー | USDT | × |
カルダノ | ADA | × |
ドージコイン | DOGE | × |
リップル | XRP | 〇 |
ポルカドット | DOT | × |
USDコイン | USDC | × |
ユニスワップ | UNI | × |
チェインリンク | LINK | × |
インターネットコンピュータ | ICP | × |
ビットコインキャッシュ | BCH | 〇 |
ライトコイン | LTC | × |
ポリゴン | MATIC | × |
ステラルーメン | XLM | 〇 |
ソラナ | SOL | × |
バイナンスUSD | BUSD | × |
ヴィチェーン | VET | × |
シータ | THETA | × |
イーサクラシック | ETC | × |
ラップドビットコイン | WBTC | × |
イオス | EOS | × |
トロン | TRX | 〇 |
ファイルコイン | FIL | × |
- 取引可能:6種類
- 取引不能:19種類
何と、時価総額上位25種類のうち、国内取引所等で売買可能なのは6種類しかなく、残り19種類は取引できません。また、トップ10に限っても、取引可能なのは3種類しかありません。
これを株式の世界に強引に当てはめるなら、ソフトバンク株は買えるけれどトヨタ株や日本製鉄株は買えないイメージです。FXの世界なら、米ドル/円は買えるけれどポンド/円や豪ドル/円は取引できない、という感じ。
面白くない話です。
「取引できない」が意味すること
では、取引できないことは何を意味するか?ですが、チャートを見れば良く分かります。例としてバイナンスコイン(BNB)をチェックしましょう。
直近1年間の値動きですが、2021年初めまではとても安い価格で、しかし着実に価格を上昇させながら推移してきました。その後、一気に700ドル弱(7万円台)くらいまで価格が伸びました。
国内取引所では、この流れに乗ることができません。
もちろん、チャート右側の高値で買って価格下落をまともに受けてしまえば損になりますが、それはビットコインでも株でもFXでも同じです。
問題なのは、取引する機会さえないという点です。
このため、ツイッターなどを検索すると簡単に分かります通り、多くの日本人が海外取引所で取引しており、そしてその模様をツイートして楽しんでいます。
海外取引所で利用可能なサービス
次に、海外取引所で利用可能な主なサービスを確認します。これらサービスはとても多彩で、日本の取引所ではできなかったり、日本ではサービスレベルがイマイチだったりというものが複数あります。
- 取引所で売買
- レバレッジ取引
- オプション取引
- 先物取引
- ローン(貸付)
- ローン(借金)
- ステーキング
- ファーミング など
ローン、ステーキング、ファーミングの3つは、海外勢が圧倒的で日本勢は太刀打ちできません。
ローン
仮想通貨を貸して稼ぐのは、日本でもできます。ただし、貸す相手は取引所運営会社に限られており、条件は顧客にとって厳しい内容です。
その条件では嫌だと思っても、国内では他に選択肢がありませんから、受け入れざるを得ません。
海外の場合は、個人向けに貸すこともできます(担保を取ることで安全度を高めています)。いつ貸すか、貸出しをいつ止めるかといった内容を自由に決められますし、利率は市場原理を働かせていますので、日本に比べて納得感のある内容です。
ステーキング
テゾス(XTZ)やトロン(TRN)といったプループ・オブ・ステーク(POS)を採用した仮想通貨なら、日本でもステーキングできます。ただし、日本で取引できる仮想通貨の種類が少ないのがデメリットです。海外には、この制約はありません。
また、分散取引所などDefi(分散型金融)の世界では、特定のトークン(CAKEなど)をステーキングすることで草コインなどをもらえるサービスがあります。
このサービスは日本に存在せず、また利率も100%前後が珍しくないため、人気を集めています。
ファーミング
ファーミングは、主に分散取引所(DEX)で採用されているサービスです。
あらかじめDEXはユーザーから仮想通貨を借りておき、トレードしたいという人が出てきたら、集めておいた仮想通貨を使って時価で売買します。そして、仮想通貨を貸してくれた人に、売買手数料の大半を還元します。
ユーザーは、仮想通貨の提供をいつ止めても構いませんので、とても自由度が高いです。こちらも、年率数十%という高利率がたくさんありますので、人気を集めています。
日本の取引所のサービスが劣る理由
日本にはなくて海外にはあるというサービスが、いくつもあります。振り返ると、2014年~2017年頃、日本は仮想通貨の世界で世界をリードする存在だったのに、なぜこんな状態になってしまったのでしょうか。
(以下、予想になります。)
理由の一つとしては、ハッキングを受けて仮想通貨を盗まれる取引所がいくつも出てしまったことが挙げられるでしょう。日本や世界を大きく騒がせたものとしては、Mt.GOXやコインチェックの事件があります。
それらを受けて、当初は業界の自主的な規制に任せるように見えた金融庁が、大きく舵を切りました。すなわち、規制重視です。
その結果、実は金融庁の規制に則っていなかった例が次々に見つかり、行政指導が連発。古参組の取引所等で、行政処分を受けていない会社はほとんどないのでは?というくらい、行政指導が連発されました。
おそらくはそれが影響して、現在に至ります。
日本の仮想通貨業界自身の甘さが、海外勢に大きく後れを取ってしまった原因の一つだと言えそうです。
主な海外取引所
日本から海外に話を戻しまして、海外にはどんな取引所があるのか?を見ていきましょう。上位10個を順に掲載します(2021年6月3日時点、CoinMarketCapからデータ取得)。
取引所名 | 24時間取引高(億円) |
バイナンス(Binance) | 3兆3,624億円 |
フォビ・グローバル(Huobi Global) | 8,934億円 |
コインベース(Coinbase Exchange) | 3,254億円 |
クラーケン(Kraken) | 2,023億円 |
クーコイン(KuCoin) | 1,574億円 |
ゲート(Gate.io) | 1,294億円 |
米国バイナンス(Binance.US) | 1,030億円 |
ビットフィネックス(Bitfinex) | 817億円 |
ビッサム(Bithumb) | 1,117億円 |
ビットスタンプ(Bitstamp) | 638億円 |
24時間取引額だけでなく信頼度を加味した順位付けとなっていますので、必ずしも取引高と順位が一致しているわけではありません。しかし、取引額と順位は概ね一致していることが分かります。
その中でも、バイナンスが跳びぬけて大きな取引額を誇っていることが分かります。また、第7位にはバイナンスの協力で作られた米国バイナンスがランクインしており、両社を合わせると、さらに巨大な存在になります。
なお、上の表は海外勢ばかりで、日本の取引所の名前が出てきません。日本で最もランクが高いのは、ビットフライヤーで12位となっています(24時間取引高は332億円)。
日本の取引量はそんなに少ないのか?ですが、上の表には販売所の取引高が含まれていないようですので、それを含めれば日本勢も健闘するかもしれません。
それを加味しても、2014年~2017年あたりの日本は仮想通貨の世界で世界をけん引する立場だったのに、今では取引高もサービスの多様さも海外勢に劣っている…と、残念な気持ちになります。
リスクを承知した上で
最後に、以上の考察を受けて何が何でも海外取引所の方が良いか?と言えば、それは無理があります。
例えば、日本の取引所は金融庁の監督下で営業していますので、法律等に違反すれば金融庁から処分を受けますし、私たちの資産も守られます。
その一方、海外取引所は文字通り海外にありますから、日本の法律等は適用されませんし、何かあった時に国民生活センター等に助けを求めても、効果的な支援を得られないでしょう(相手は海外にいるから)。
しかし、海外取引所は取引可能な種類が多いだけでなく、サービス内容も豊富で楽しい…というわけで、使い分けをするのが良さそうです。
国内取引所
- 入金額は、海外取引所への入金額よりも大きくする
- ビットコインなど主要通貨で取引
- 基本的なサービスで満足する
海外取引所
- 投入金額を小さくする
- 国内取引所で取引できない通貨を取引
- 国内で利用できないサービスを使う
上の数字1~3は、それぞれ対応しています。
意図は、海外取引所は国内と比べて法的な面で劣るので、資金量は少なめにしましょうという内容です。そして、何らかの事故が起きて資金が失われても「仕方ない」と諦められる金額で取引します。
また、事故が起きる場合のダメージを軽くするために、海外取引所を1つに絞って全資金を投入するのではなく、有名どころを2つ~3つ選んで資金を分散するのも良さそうです。